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士業(税理士・社労士)事務所のDX事例。紙の山とFAXを3ヶ月でなくした実装記録

📅 2026年06月04日
アキナイクロス

「先生、FAXが届いています」。この会話が今も毎日交わされている士業事務所は多い。

士業(税理士・社労士)事務所のDX事例。紙の山とFAXを3ヶ月でなくした実装記録

2,000社を超える支援の中で、士業事務所のDXが他業種より遅れている理由は明確だ。「顧客が紙で送ってくる」「FAXを使っているクライアントが多い」という現実と、「変えることで何かミスが起きるのでは」という慎重さが重なっている。

しかし実際には、士業DXで紙廃止・FAX廃止を実現した事務所は、業務効率と顧客対応の質の両方を改善している。この記事では、岡山県の税理士事務所(8名)が3ヶ月でFAXを廃止し、書類管理工数を週5時間から1時間に削減した実装プロセスを記録する。


士業事務所の紙・FAX問題が経営に与える3つの影響

士業事務所の紙・FAX問題が経営に与える3つの影響

影響1:書類の探す時間が積み重なる

顧客から届く領収書・契約書・申告書類を紙で管理していると、「あの書類はどのファイルか」という確認が毎日発生する。1回の検索に5分かかるとすれば、日に10回検索すれば50分だ。そのため、月に換算すると、書類を探すだけで20時間以上失われる。

影響2:FAXの受信・仕分け・転送に人手がかかる

FAXが届くたびに、受信確認・印刷・内容確認・担当者への仕分けという作業が発生する。また、FAXの内容を業務システムに手入力する場合、転記ミスのリスクも生まれる。つまり、FAXを使い続けるコストは「通信費」だけではない。

影響3:書類の紛失リスクと法的対応コスト

税理士・社労士事務所には、顧客の重要書類を一定期間保管する義務がある。紙書類は火災・水害・紛失のリスクが常にある。さらに、税務調査や顧客からの書類再提出要求に対応する際、紙管理では対応コストが高くなる。


岡山県・税理士事務所8名の実装プロセス

実際に士業DXで紙廃止・FAX廃止を実現した事例を紹介する。

導入前の状況

岡山県の税理士事務所(8名)では、以下の状況が続いていた。

  • 顧客からの領収書・書類が毎月大量に紙で届く
  • FAXが毎日10〜20件届き、受信・仕分けに朝30分を費やしていた
  • 書類をファイリングして棚に並べる作業に、週5時間かかっていた
  • 書類を探す場面で、「どのファイルか」の確認に1件あたり平均7分かかっていた

「紙をもらう。ファイルに入れる。また探す。この繰り返しが、士業事務所の仕事だと思っていた。デジタル化してから、書類を探す時間がほぼなくなった。それだけで毎週何時間も浮く」

— 岡山県・税理士事務所・8名規模

実装の3ステップ

士業DXの3ステップ

  • Step 1「紙書類のスキャン+クラウド保存」:届いた紙書類をスキャンし、クラウドストレージ(Google Drive等)に顧客別・書類種別でフォルダ管理する。スキャナーは業務用複合機で十分だ。入力時間は1件2〜3分に収まる
  • Step 2「クラウドFAXへの切り替え」:FAX番号はそのままに、受信先をクラウドFAXサービス(FAXDMクラウド・eFAX等)に切り替える。受信したFAXはPDFとしてメールに届くため、印刷が不要になる。FAX機そのものを撤去するのではなく、「受信のデジタル化」から始めることで、クライアントへの影響をゼロにできる
  • Step 3「電子申請の完全移行」:e-Tax・e-Gov等の電子申請に対応していない書類が残っている場合、この段階で対応を完了させる。また、クライアントへの書類送付もPDF送付に切り替える依頼を順次行う

3ヶ月後の結果

【比較】DX前 vs DX後(税理士事務所8名)

比較項目 DX前 DX後
書類管理工数 週5時間 週1時間
FAX受信・仕分け 毎朝30分 PDF自動受信・仕分け不要
書類の検索時間 1件あたり平均7分 キーワード検索で数秒
書類の紛失リスク 紙の紛失・劣化リスクあり クラウドバックアップで消失ゼロ

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士業DXを進める上での2つの注意点

士業DXを進める上での2つの注意点

注意点1:クライアントへの切り替え依頼は段階的に行う

FAX廃止・PDF送付への切り替えを一度に全クライアントに依頼すると、混乱が生じる。実際に、「FAXしか使えない」クライアントが一定数存在する。そのため、新規クライアントからデジタル対応を原則にし、既存クライアントは年単位で順次切り替えを依頼するアプローチが現実的だ。

注意点2:電子帳簿保存法への対応を確認する

2024年以降、電子取引の電子保存が義務化された。つまり、クラウドで受け取ったPDFをプリントアウトして紙で保管することは法的に問題が生じる可能性がある。士業事務所として自社のデジタル化を進める際は、電子帳簿保存法の要件(タイムスタンプ・検索機能等)を満たすシステムを選ぶことが重要だ(※詳細は国税庁の最新情報を確認すること)。


よくある質問

Q1. FAXを使い続けているクライアントが多い場合、どうすればよいか?

クラウドFAXに切り替えれば、クライアント側の操作は何も変わらない。FAX番号もそのまま使える。クライアントにとっては「相手先が変わっていない」ため、抵抗なく移行できる。まずクラウドFAXに切り替えることで、事務所側の受信・印刷コストをゼロにすることから始めるといい。

Q2. スキャンした書類の原本は捨てていいか?

書類の種類によって保管義務が異なる。たとえば、e-文書法の対象書類はスキャン保存で原本廃棄が認められているものもある(※種類・要件は所管官庁の最新情報を確認すること)。自事務所の対応方針を決める前に、税理士・社労士向けの電子帳簿保存法対応ガイドを確認することを勧める。

Q3. クラウドストレージのセキュリティは大丈夫か?

顧客の重要情報を扱う士業事務所として、セキュリティは最重要事項だ。具体的には、ビジネスグレードのGoogle WorkspaceやMicrosoft 365を使えば、二段階認証・アクセス権限管理・ログ記録が標準で備わっている。また、個人情報保護の観点から「誰がどのファイルにアクセスできるか」の権限管理を明確に設定することが必要だ。


まとめ

  • 士業DXで紙廃止・FAX廃止は「クライアントへの影響ゼロ」から始められる。クラウドFAXへの切り替えから着手するのが現実的だ
  • 書類管理のデジタル化は「スキャン+クラウドフォルダ管理」というシンプルな仕組みで十分機能する
  • 3ヶ月で書類管理工数を週5時間から1時間に削減した事例は、特別なシステムなしで達成できる
  • 電子帳簿保存法への対応は必須。デジタル化のタイミングで法的要件を満たすシステムを選ぶことが重要だ
  • FAXを使うクライアントが多い場合も、クラウドFAX経由で受信するだけで、事務所側のコストを大幅に削減できる