飲食業のDX。注文・勤怠・仕入れをアプリで管理した小規模チェーンの事例
飲食業は、日本の産業の中でもデジタル化が遅れている業種の一つだ。理由は単純で、「現場が忙しすぎてデジタル化を考える暇がない」からだ。

ランチタイムの喧騒、アルバイトの突然の欠勤、食材の廃棄ロス——これらを毎日こなしながら、新しい仕組みを導入する余裕が生まれない。しかし、この状態を放置すると人手不足と価格上昇の圧力で経営が追い詰められる。
飲食業のDXは「一気にやる」のではなく、「今一番困っていること」から始めるのが正解だ。
飲食業DXの3つの急所

飲食業がデジタル化で効果を出しやすい領域は3つある。
1. 注文・会計管理(POSレジ・セルフオーダー)
紙の伝票と手書き集計からクラウドPOSに移行するだけで、売上分析・時間帯別客数・メニュー別売れ行きが自動で見えるようになる。セルフオーダー端末(タブレット注文)を導入すればホール人員を削減できる。
2. 勤怠管理・シフト管理
アルバイト中心の飲食業では、シフト管理と勤怠管理が経営者の時間を大量に奪う。クラウド勤怠管理ツールとシフト管理アプリを使えば、シフト調整・打刻・給与計算の連動が実現し、管理工数を大幅に削減できる。
3. 仕入れ・在庫管理
食材の発注を勘に頼っていると、廃棄ロスと欠品が同時に起きる。POS売上データと食材在庫を連動させると、発注タイミングと発注量の精度が上がる。
飲食業DXで実現できること
- 廃棄ロスの削減:売上予測から適切な仕入れ量を割り出せる
- 人件費最適化:時間帯別客数データからシフトを最適化できる
- 店舗比較:複数店舗の売上・客数・原価率をリアルタイムで比較できる
注意点
- 現場への丁寧な説明が必要:スタッフ(特にアルバイト)が使えなければ意味がない。導入時の研修と運用ルール設定が重要
- ツールの使い分けが複雑になりすぎない:POSと勤怠と発注が別々のツールで連携していないと、管理が余計に面倒になる
小規模チェーン3店舗のDX事例
【実録:ラーメンチェーン3店舗(従業員パート含め約20名)の事例】
各店舗がバラバラにExcelでシフト管理し、売上報告もLINEで送っていた。本部が集計するのに毎週2〜3時間かかっていた。クラウドPOS(月額2.5万円/店)とクラウド勤怠管理(月額5千円)を導入。売上は自動で本部に集計され、シフトはスタッフ自身がアプリで申請できるようになった。本部の管理工数が週2時間から30分以下に短縮。
導入のポイントは「まずPOSから入れる」ことだ。POSを入れると売上データが自動で蓄積され、それが後続のDX(メニュー改善・シフト最適化・廃棄削減)の基礎データになる。
飲食業DXに使えるツールと費用感

POSレジ
- スマレジ(月額0〜数万円):機能が充実。飲食業特化プランあり
- Airレジ(月額0〜数万円):iPad対応。初期費用を抑えやすい
- Square POS(月額0円〜):カード決済と一体型。小規模店舗に向く
勤怠・シフト管理
- タイムツリー・シフボ(月額数千円〜):シフト管理に特化
- freee勤怠管理(月額数千円〜):給与計算と連動
- キングオブタイム(月額300円/人〜):打刻機能が充実
仕入れ・発注管理
- クラストシリーズ(業種特化型)
- Orizuru(飲食業向け受発注管理)
補助金の活用
IT導入補助金(通常枠)が活用できる。POSレジシステム・勤怠管理ソフトが対象になるケースが多い。補助率2分の1、上限150万円。複数ツールをまとめて申請できる場合もある。
よくある質問
Q. デリバリー(Uber Eats等)との連携は必要か?
デリバリーを展開している場合、POSとデリバリーの注文を一元管理できるツール(Iscore等)を使うと、集計の二度手間が減る。
Q. セルフオーダーシステムはコスト回収できるか?
ホール人員を1人削減できれば、月20〜30万円のコスト削減になる。多くのセルフオーダーシステムは月額数万円から導入できるため、回収は早い。
まとめ
- 飲食業DXの急所は「注文管理・勤怠管理・仕入れ管理」の3領域
- まずPOSレジのクラウド化から始めると売上データが蓄積されDXの基盤になる
- 小規模チェーンでも週に数時間の管理工数削減が実現できる
- IT導入補助金を活用することで初期コストを半額にできる
著者プロフィール
伊藤健太|株式会社ウェイビー 代表取締役CEO
23歳、病気をきっかけに、小学校友人4名、資本金5万円で起業。2011年から起業支援の行政書士として国内有数の年1,000社超の起業に携わる。その後、売上アップ、仕組み化、新規事業、事業承継、AI、DX化など1万社超の起業家、経営者の成長支援をサポート。全国700回を超える講演、著書7冊。
1986年横浜市生まれ、熊本市在住。慶應義塾大学法学部卒業。元徳島大学客員教授。ダボス会議 U33メンバー。
