運送業の2024年問題とDX。ドライバー不足を配車最適化で補う
2024年4月から、運送業の時間外労働に年960時間の上限が課せられた。
これが「2024年問題」と呼ばれるゆえんだ。

しかし売上は落とせない。荷物の量が減るわけでもない。
そのまま運ぼうとすれば、法律違反になる。
2,000社を超える支援の中で、私が見てきた中小運送会社の多くは、この壁の前で立ち止まっていた。
だが解決策はある。配車最適化DXだ。
2024年問題の本質は「ドライバーの時間が足りない」ことだ
規制強化の前、運送業のドライバーは長時間労働で物量をこなしていた。
残業月60〜80時間が当たり前だった会社も少なくない。
しかし2024年以降、年間960時間(月平均80時間)を超える残業は違法になった。
つまり今まで「時間」で埋めていた人手不足を、別の方法で補うしかない。
採用で解決しようとする会社もある。
だが運送業のドライバー有効求人倍率は全職種平均の3倍以上だ。
採用だけでは間に合わない。
そのため、今いるドライバーの生産性を上げるしか道がない。
その手段が「配車最適化」だ。
配車最適化とは何か

配車最適化とは、AIやシステムを使って「誰が・どのルートで・いつ届けるか」を自動計算する仕組みだ。
従来の配車は、ベテランの担当者が経験と勘で決めていた。
午前中に電話で注文を受け、手書きや表計算ソフトで組み立てる。
この作業だけで1〜2時間かかることもある。
しかし配車最適化AIを使えば、同じ作業が10分以内に終わる。
さらに、最短ルート・最少走行距離・ドライバーの拘束時間をすべて同時に最適化できる。
配車最適化AIで変わること
- 配車作業時間:1〜2時間 → 10〜15分(80%削減)
- 走行距離:最適ルート計算で10〜20%削減
- 残業時間:配車の効率化で月30〜40時間→15〜20時間
- 配達件数:同じドライバー数で15〜25%増加
導入前に確認すること
- 配送先データ:住所・時間指定が電子化されていること
- スタッフの受け入れ:「システムに任せる」文化作りが先決
スマホ日報で乗務記録を自動化する
配車最適化と並行して、多くの中小運送会社が悩むのが「日報・乗務記録の手間」だ。
紙の日報に手書きで記録し、それを事務員が転記する。
この作業が毎日発生している。
スマホアプリの日報システムを導入すれば、ドライバーがスマホで入力した瞬間にクラウドへ記録される。
転記作業はゼロになる。点呼記録・走行距離・積載重量も同時管理できる。
また、デジタコ(デジタル運行記録計)と連携するシステムを使えば、手入力すら不要になる。
走行データが自動で記録され、コンプライアンス管理も楽になる。
支援事例:愛媛県・運送業20名
AI配車システムとスマホ日報を同時導入。配車担当者1名の作業が1日2時間から30分に短縮。ドライバーの月残業が平均30時間から15時間に半減した。売上は前年比維持。「同じ人数で同じ量を運べている」とオーナーからの言葉があった。
— 運送業・20名・愛媛県
この会社が最初に取り組んだのは、配送先の住所データをExcelに整理することだった。
それだけで配車AIが使えるようになった。
つまりスタートに必要なのはデータ整備だ。
システムより先に、データを整える。この順番が重要だ。
中小運送会社がDXで着手すべき3ステップ

STEP 1:配送先データをデジタル化する
住所・時間指定・担当ドライバーをExcelやGoogleスプレッドシートに集約する。
これが全ての出発点だ。費用はほぼゼロで始められる。
STEP 2:配車最適化ツールを試験導入する
「配車頭脳」「RouteLabo」「Loogia」などのクラウド配車ツールが月額3〜10万円で使える。
まず1ルート・1週間だけ試す。効果を数字で確認してから全体展開する。
STEP 3:スマホ日報・デジタコ連携で記録を自動化する
ドライバーの勤怠・乗務記録をデジタル管理に切り替える。
紙日報の廃止は、事務コストの削減と法令遵守の両立につながる。
3ステップの目安コスト
- STEP 1(データ整備):0円〜(内製可能)
- STEP 2(配車ツール):月額3〜10万円
- STEP 3(スマホ日報):月額1〜3万円
IT導入補助金の活用
- 対象:クラウド配車ツール・デジタコ連携システムは補助対象になるケースが多い
- 補助率:最大3/4(2026年度のIT導入補助金Bは要確認)
2024年問題は「DXの切り口」として使える
2024年問題は、運送業にとって脅威ではある。
しかし見方を変えれば、DX化の正当な理由になる。
「法律が変わったから、やらざるを得ない」。
この外圧こそ、社内を動かす一番の理由になる。
私が支援した会社の中で、2024年問題をきっかけにDXに踏み出した運送会社は少なくない。
そして多くの場合、ドライバーの残業が減り、売上は維持か微増という結果が出ている。
DXは大企業のものではない。
20名以下の中小運送会社でも、月10万円以下の投資で始められる。
まとめ
- 2024年問題の本質は「時間で埋めてきた非効率」の限界だ
- 配車最適化AIで同じドライバー数でも配達件数を20%以上増やせる
- スマホ日報・デジタコ連携で記録業務の9割を自動化できる
- スタートはデータ整備から。費用はゼロでも始められる
- IT導入補助金で実質負担を大幅に下げられる
まず何から始めればいいか迷っている方は、30分の現状ヒアリングで具体的なロードマップをお伝えする。
著者プロフィール
伊藤健太|株式会社ウェイビー 代表取締役CEO
23歳、病気をきっかけに、小学校友人4名、資本金5万円で起業。
2011年から起業支援の行政書士として国内有数の年1,000社超の起業に携わる。
その後、売上アップ、仕組み化、新規事業、事業承継、AI、DX化など1万社超の起業家、経営者の成長支援をサポート。
「AI/DX」「起業」「新規事業」「M&A」領域で国、自治体、金融機関、上場企業からの信頼も厚く、全国700回を超える講演、著書7冊。
地域が主役の日本新時代をDX×チャレンジで創るべく、起業家、経営者の成長支援と、金融機関、新聞社、自治体向けのDX支援を展開。第一生命、広島銀行、島根銀行、熊日新聞、愛媛新聞、新日本海新聞、北日本新聞、熊本市、人吉市、美里町、山形県寒河江市、奈良県田原本町、愛媛県松前町、西条市などをご支援中。
肩書など
1986年横浜市生まれ、熊本市在住。慶應義塾大学法学部卒業。
元徳島大学客員教授。ダボス会議 U33メンバー。
東京都INCU Tokyoメンター
熊本市スタートアップメンター
よくある質問
- 配車最適化システムの導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
- クラウド型の配車ツールであれば月額数万円程度から利用できるものが多く見られます。日報システム等と合わせても少額から始められるケースが一般的です。まずは一部の配送ルートで試験導入し、効果を検証しながら進めるとよいでしょう。
- 配車システムを導入する前に準備すべきことは何ですか?
- まずは配送先の住所や時間指定などのデータを電子化して整理することです。表計算ソフト等に一覧化しておけば、スムーズにシステムへ移行しやすくなります。同時に、システムを活用する方針について現場の理解を深めておくことも大切です。
- システムの導入費用に補助金を活用することはできますか?
- クラウド配車システムや運行記録計との連携機能などは、公的なIT導入補助金の対象となる場合があります。採択されれば初期費用や利用料の負担を抑えられる可能性があるため、公募要領や適用条件を事前に確認してみるとよいでしょう。
