小売業の在庫管理DX。欠品ロスと過剰在庫を同時に解決する
小売業の在庫管理は、「感覚と経験」で成り立っている会社が多い。ベテランの仕入れ担当者が「これは売れそう」「これは余る」と判断して発注する。その人が辞めたら誰も同じ判断ができない。

しかも、感覚仕入れの結果は二つに割れる。売り切れて「もっと入れておけば良かった」という欠品ロスか、売れ残って「もう少し少なく入れれば良かった」という過剰在庫だ。
この問題をデータで解決するのが在庫管理DXだ。
欠品と過剰在庫が同時に起きる理由

一見矛盾しているように見えるが、欠品と過剰在庫は同時に起きる。
売れ筋商品の仕入れが追いつかない一方で、不動在庫が倉庫を圧迫している——これが多くの中小小売業の現実だ。
原因は「商品ごとの動きが見えていない」ことだ。全体の売上は見えていても、SKU(商品の個別管理単位)レベルでの在庫回転日数や欠品頻度が把握できていないと、適切な発注量を決められない。
在庫管理DXで得られること
- 欠品率の低下:売れ筋商品の在庫切れを事前にアラートで把握できる
- 在庫回転率の改善:不動在庫を早期に発見し、セールや返品で資金を回収できる
- 発注業務の効率化:発注点(この数量を切ったら発注する)を自動設定することで、判断業務を削減できる
注意点
- データ入力の精度が命:入出庫の記録が不正確だと在庫データがズレる。棚卸の頻度とシステムの精度を合わせること
- POS連携が前提になることが多い:販売データと在庫データを連動させるには、POSレジとの連携設定が必要
在庫管理DXの具体的な手順

ステップ1:POSレジと在庫管理を連動させる
まず、販売のたびに在庫が自動で減算される仕組みを作ることが先決だ。多くのクラウドPOSレジ(スマレジ・Airレジ等)は在庫管理機能を持っている。連動させることで、「何が何個売れたか」がリアルタイムで把握できる。
ステップ2:発注点と発注量を設定する
商品ごとに「在庫がこの数を切ったら発注する(発注点)」「発注するときはこの数量(発注量)」を設定する。初期設定は感覚で良い。データが蓄積されてから、過去の売れ行きに基づいて最適化する。
ステップ3:ABC分析で商品の優先度を決める
全商品を売上貢献度でA・B・Cの3ランクに分類するABC分析を行う。Aランク(上位20%の商品が売上の80%を占めることが多い)に在庫管理の注意を集中させ、Cランクは在庫を絞る。
【実録:地方の雑貨小売店(従業員8名)の事例】
感覚仕入れで在庫管理していた店舗。棚卸のたびに不動在庫が大量に発見され、資金繰りを圧迫していた。クラウドPOS(月額2万円)を導入し、商品ごとの動きを可視化。3ヶ月でABC分析が可能になり、Cランク商品の仕入れを減らして売れ筋のAランク商品の在庫を増やした。在庫回転率が1.4倍に改善し、欠品による機会損失も減った。
在庫管理DXに使えるツールと費用感
| ツール | 特徴 | 費用感 |
|---|---|---|
| スマレジ | POSと在庫管理を一体化。飲食・小売に強い | 月額0〜数万円 |
| Airレジ | iPad対応。基本無料で在庫管理機能も充実 | 月額0〜数万円 |
| ロジクラ | 在庫管理特化。EC連携が強み | 月額数万円〜 |
| zaico | バーコードスキャン対応のシンプルな在庫管理 | 月額数千円〜 |
よくある質問
Q. 既存のExcel管理からの移行はスムーズにできるか?
商品マスターのデータ移行が最初の山場だ。商品コード・名称・単価などをCSVで用意できれば、多くのツールはインポート機能を持っている。
Q. IT導入補助金は在庫管理ツールに使えるか?
使える。在庫管理ソフトはIT導入補助金の対象になるケースが多い。補助率2分の1で、上限は通常枠150万円だ。
まとめ
- 欠品と過剰在庫は感覚仕入れの結果として同時に起きる
- POSと在庫管理の連動、発注点設定、ABC分析が在庫管理DXの3本柱
- クラウドPOSは月額0〜数万円から始められる
著者プロフィール
伊藤健太|株式会社ウェイビー 代表取締役CEO
23歳、病気をきっかけに、小学校友人4名、資本金5万円で起業。2011年から起業支援の行政書士として国内有数の年1,000社超の起業に携わる。その後、売上アップ、仕組み化、新規事業、事業承継、AI、DX化など1万社超の起業家、経営者の成長支援をサポート。全国700回を超える講演、著書7冊。
1986年横浜市生まれ、熊本市在住。慶應義塾大学法学部卒業。元徳島大学客員教授。ダボス会議 U33メンバー。
