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ツールを導入した翌月に現場が元に戻っていた。DX定着率ゼロから抜け出した方法

📅 2026年06月26日
アキナイクロス

「先月入れたシステム、もう誰も使っていないんですよね」

ツールを導入した翌月に現場が元に戻っていた。DX定着率ゼロから抜け出した方法

この言葉を、私は何度聞いてきたかわからない。「定着しない」という現象は、特定の会社の問題ではない。DX支援の現場では日常的に起きている。

なぜDXツールが現場で使われないのか。そして、どうすれば変わるのか。この記事では、支援者・経営者・現場のそれぞれの立場から、定着率ゼロの構造と出口を正直に書く。「ウェイビーを使えば解決します」という話にはならない。むしろ、支援者側の問題を中心に話す。


DXツールが現場で使われない・「元に戻る」理由

定着率ゼロの現象を表面だけ見ると「現場のやる気がない」「変化を嫌う職人気質」という結論になりやすい。しかし、それは本質を見誤っている。

実際に、「元に戻る」には必ず構造的な理由がある。

理由1:「なぜ変えるのか」が現場に届いていない

新しいシステムを使うよう指示された現場は、その理由を知らないことが多い。「会社が決めた」「上が言っている」という情報しかない。つまり、自分の仕事がどう楽になるのかが見えない状態で、慣れた旧来の方法に戻るのは当然だ。

理由2:「困った時に誰に聞けばいいか」がない

導入初期は必ず「このボタン何ですか」「エラーが出た」というつまずきが発生する。そのときに聞ける人間が社内にいないと、「とりあえず昔のやり方でやっておこう」になる。そして、1度元に戻ると、そのまま定着しなくなる。

理由3:支援者が「入れて終わり」だった

ここが最も重要な点だ。DX支援の会社が「ツールの導入」だけを業務として設計している場合、導入後のフォローが存在しない。ツールを入れることと、ツールが定着することは、全く別の仕事だ。したがって、支援者がその違いを理解しているかどうかが、定着率を左右する。

【比較】定着を生む支援 vs 定着を生まない支援

比較項目 定着を生まない支援 定着を生む支援
支援の終わり 「ツールを入れた」時点で終わり 「現場が自走している」時点で終わり
現場との関係 経営者・支援者のみで完結。現場は受け手 現場担当者が設計段階から参加している
導入後のサポート 「何かあれば連絡を」で実質ゼロ 導入後1〜3ヶ月の定期フォローが組み込まれている
成功の測定 「入れた」という事実だけ。定着率を測らない 使用率・業務効率の変化を数字で追っている

経営者がやるべき3つのこと

経営者がやるべき3つのこと

支援者の問題だけではない。経営者にも、定着率ゼロを招く行動パターンがある。

行動1:「あとは頼む」で終わらせない

コンサルや業者に任せたあと、経営者が現場に顔を出さなくなるケースがある。すると、現場の従業員は「社長も気にしていない」と感じる。新しいツールは「また上が始めた何か」として認識され、優先度が下がる。

そのため、経営者が月1回でも「新しいシステム、使えてる?」と現場に声をかけることは、定着に大きく影響する。

行動2:最初の成功体験を作る仕組みを設ける

「このツールを使ったら、この手間がなくなった」という成功体験を最初に作ることが重要だ。最初のターゲットを「一番困っている担当者の、一番面倒な作業」に設定する。その担当者が「楽になった」と感じれば、社内への波及が自然に起きる。

行動3:「元に戻った」を責めない

元に戻った現場を責めると、「やっぱり難しかった」という空気になり、次の試みがさらに難しくなる。一方、「元に戻ったのは設計の問題だ」と経営者が認識することが、再チャレンジへの入り口だ。

「定着率ゼロから抜け出した」会社の行動パターン

  • 現場の声を聞き直した:「なぜ元に戻ったのか」を責めずにヒアリング。理由を把握してから再設計した
  • 範囲を絞った:「全員が使う」ではなく「この担当者だけ」にターゲットを絞った
  • 支援者を変えた(または変えなかった):支援者の問題が原因なら変える。問題が設計にあるなら同じ支援者と再チャレンジする
  • 3ヶ月間の定期確認を設けた:月1回「使えているか」を確認する場を意図的に設けた

やってはいけないこと

  • 別のツールに乗り換える:定着しない原因がツールにあることは少ない。ツールを変えても同じことが繰り返される
  • 責任を現場に押し付ける:「使う気がない」と判断すると、本当の原因にたどり着けない

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支援者を選ぶときに確認すべきこと

定着率ゼロが繰り返されている会社の多くは、支援者の選び方に課題がある。

良い支援者かどうかを確認するには、次の質問をすればよい。

「このツールが定着したかどうかを、あなたはどう確認しますか?」

答えが「導入後にフォローアップの面談を月1回設けています」「使用率のデータを確認しています」であれば、定着まで考えている支援者だ。

一方、答えが「何かあればご連絡ください」であれば、導入後のことを設計に含めていない可能性が高い。

これはウェイビーにも言えることだ。私たちが全てのケースで完璧に定着まで設計できているとは言わない。支援の質にはケースごとのばらつきがある。しかし「定着させることが支援の仕事だ」という認識は持っている。この認識を持っているかどうかで、支援の設計が変わる。

よくある質問

一度元に戻ったあと、再チャレンジはできるか

できる。ただし「前回と同じやり方」では同じ結果になる。再チャレンジ前に「なぜ定着しなかったか」を必ず分析すること。多くの場合、「対象範囲が広すぎた」か「現場担当者を巻き込まなかった」のどちらかが原因だ。

支援者に「定着しなかった」ことを伝えにくい

率直に伝えることが、双方にとって最善だ。「定着しなかった」という事実は、支援者が設計を改善するための最重要情報だ。良い支援者は「なぜ定着しなかったか、一緒に分析させてください」という反応をする。責任転嫁の反応をする支援者は、その時点で見直しの対象になる。

ツールを変えれば定着するのか

ほとんどのケースでは、ツールが問題の原因ではない。「現場に理由が伝わっていない」「聞ける人がいない」「フォローがない」という設計の問題がほとんどだ。ただし、使いにくいUIが原因の場合は例外的にツール変更が有効なこともある。


まとめ:「元に戻る」は現場の失敗ではなく、設計の失敗だ

DX定着率ゼロの根本原因は、現場のやる気ではなく、支援と導入の設計にある。

  • 「元に戻る」3つの理由:理由が届いていない・相談窓口がない・支援者が入れて終わり
  • 経営者がやるべきこと:「任せて放置」にしない・最初の成功体験を設計・元に戻っても責めない
  • 良い支援者の確認ポイント:「定着したか」をどう確認するかを聞く
  • ウェイビー自身も例外ではない

「誰が悪いか」ではなく「設計の何が問題だったか」という問いを持てた会社が、次のチャレンジで成功している。


著者プロフィール

伊藤健太|株式会社ウェイビー 代表取締役CEO

23歳、病気をきっかけに、小学校友人4名、資本金5万円で起業。
2011年から起業支援の行政書士として国内有数の年1,000社超の起業に携わる。
その後、売上アップ、仕組み化、新規事業、事業承継、AI、DX化など1万社超の起業家、経営者の成長支援をサポート。
「AI/DX」「起業」「新規事業」「M&A」領域で国、自治体、金融機関、上場企業からの信頼も厚く、全国700回を超える講演、著書7冊。
地域が主役の日本新時代をDX×チャレンジで創るべく、起業家、経営者の成長支援と、金融機関、新聞社、自治体向けのDX支援を展開。第一生命、広島銀行、島根銀行、熊日新聞、愛媛新聞、新日本海新聞、北日本新聞、熊本市、人吉市、美里町、山形県寒河江市、奈良県田原本町、愛媛県松前町、西条市などをご支援中。

肩書など
1986年横浜市生まれ、熊本市在住。慶應義塾大学法学部卒業。
元徳島大学客員教授。ダボス会議 U33メンバー。
東京都INCU Tokyoメンター
熊本市スタートアップメンター