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社長がDXを主導すべきか、担当者に任せるべきか。失敗しない役割分担

📅 2026年06月19日
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AKINAI-X Lab編集部

「DXは社長が引っ張るべきだ」という声がある。一方、「現場をわかっている担当者に任せるべきだ」という声もある。2,000社を超える支援の中で、私が見てきた失敗の多くは、この問いの答えを曖昧にしたまま動き出したケースだ。

社長がDXを主導すべきか、担当者に任せるべきか。失敗しない役割分担

結論を先に言う。社長と担当者の役割は、はっきり違う。そして、混同すると必ず失敗する。

この記事では、社長がやるべきことと担当者がやるべきことを明確に整理する。「誰がDXを主導するか」という問い自体が、間違った問い立てだということも、あわせて伝えたい。


「DXは誰がやるか」という問いが間違っている理由

「DXは誰がやるか」という問いが間違っている理由

社長が主導する会社では「担当者が育たない」という問題が起きる。すべての判断が社長に集中するため、担当者は動けなくなる。そのため、社長が忙しくなったり関心が移ったりした瞬間に、DXが止まる。

しかし一方で、担当者に任せきりにした会社では「方針がブレる」という問題が起きる。担当者が一生懸命ツールを選んでも、経営判断が伴わないため予算が出ない。また、現場で使われても全社展開につながらない。いずれ「いいシステムを入れたが、結局使われていない」という状態になる。

つまり、問いを「どちらが主導するか」にしている限り、どちらの選択肢を選んでも失敗する。正しい問いは「社長と担当者がそれぞれ何をやるか」だ。


社長が必ずやるべき4つの仕事

社長の役割は、実務の推進ではない。DXを「会社の意思決定」として機能させることだ。具体的には4つある。

1. 方針と優先順位を決める

「何のためにDXをするか」を言語化して、社内に伝えることが社長の仕事だ。「売上を上げるため」「人手不足に対応するため」「大手の取引条件に応えるため」のどれが最優先かを決めるのは、担当者には判断できない。そのため、社長が旗を立てる必要がある。

2. 予算と時間を確保する

DXの取り組みは、初期に現場の時間を必ず消費する。通常業務に加えて、現状把握・ツール選定・研修・移行作業が発生する。担当者がこれをやれる状態にするためには、社長が「この期間はDXに時間を使っていい」と明示的に許可する必要がある。また、補助金申請・システム費用の意思決定も社長の領域だ。

3. 外部との交渉に出る

補助金申請・ベンダーとの契約・金融機関との資金調達は、社長が対応する場面だ。担当者が優秀でも、社長でなければ動かせない話がある。特に補助金の採択審査では、経営者の本気度が見られる場面も多い。

4. 反対意見に対して決断する

DXが進むと、必ず現場からの反発が起きる。「今のやり方で問題ない」「忙しいのに変えられない」という声は、どの会社でも出る。しかし、この判断を担当者に押しつけてはいけない。担当者が「社長の方針として進めます」と言えるように、社長が後ろ盾になることが必要だ。


担当者が必ずやるべき4つの仕事

担当者の役割は、現場と経営の間を動き回ることだ。社長が決めた方針を、現場が動ける形に翻訳する仕事とも言える。

1. 現状の業務を可視化する

「誰が」「何を」「どれくらいの時間をかけて」やっているかを調べることは、担当者の最初の仕事だ。社長にはわからない現場の実態を、正確に言語化する役割を担う。

2. ツールを選定・試す

どのツールが自社の課題に合うかを調べ、小さく試すことは担当者の仕事だ。ただし、最終的な導入決定は社長に上げる。担当者が一人で「導入します」と動くと、後で予算や承認の問題が起きる。そのため、「この課題には、このツールが有効だ。コストはこれだ。試験導入をしてよいか」という形で社長に判断を求める進め方が正しい。

3. 現場との橋渡しをする

変化に抵抗する現場スタッフの不安を聞き、「この変更で何が楽になるか」を個別に伝えることは担当者の仕事だ。社長が直接現場を説得しようとすると、かえって現場が委縮する。さらに、担当者が継続的に現場と対話することで、定着率が大きく変わる。

4. 進捗を管理して社長に報告する

「今どこまで進んでいて、次何が必要か」を定期的に社長に共有することが、担当者の仕事だ。具体的には、月1回・15分程度の簡易報告で十分だ。しかし、これがないと社長の関心が薄れ、予算・時間のサポートが止まる。


役割の混同が起こりやすい3つのパターン

2,000社を超える支援の中で、社長と担当者の役割混同は3つのパターンに集約される。

よく起きる役割混同パターン

  • 社長がツールを選ぶ:経営判断ではなく、社長が自ら気に入ったツールを押しつける。担当者の選定プロセスが無効化され、現場定着に失敗することが多い
  • 担当者が予算交渉に出る:ベンダーとの価格交渉や補助金申請を担当者だけでやろうとする。決裁権がないため交渉力が低下し、条件を引き出せない
  • 反発対応を担当者が一人で抱える:現場の反発を担当者が独力で処理しようとする。結果として担当者が孤立し、モチベーションが落ちてDXが止まる

特に注意が必要な混同

  • 「任せた」で終わる社長:担当者に丸投げして関与を止めると、担当者は身動きが取れなくなる。月1回の報告を受け取るだけでも、社長の存在がDXを動かし続ける

社長vs担当者の役割を一覧で整理する

社長vs担当者の役割を一覧で整理する

【比較】社長の役割 vs 担当者の役割

項目 社長がやること 担当者がやること
目的・方針 何のためにDXするかを決める 方針を実務に落とし込む
予算・リソース 予算・時間・人材を確保する 費用対効果を算出して社長に提案する
ツール・技術 最終導入を承認する 候補を調査・試用して社長に判断材料を出す
現場対応 「会社の方針」として後ろ盾になる 現場スタッフと対話して不安を解消する
外部交渉 ベンダー・補助金・金融機関の交渉に出る 交渉の準備・資料作成・日程調整をする
進捗管理 月1回の報告を受け取り、判断する 進捗を管理し、定期報告を準備する

実際の役割分担がうまく機能した事例

実際の役割分担がうまく機能した事例

広島県の製造業・従業員20名の会社でのことだ。社長はIT苦手で「担当者に任せる」と言っていた。しかし、担当者が一人で動いても予算が出ず、ベンダーとの交渉も進まなかった。そのため、DXが半年間止まった状態が続いた。

そこで、役割分担を明確に決め直した。社長は「月1回・30分の報告を受け取る」「補助金申請の経営者欄を担当する」「現場に方針を話す場を1回設ける」の3つだけをやることにした。一方、担当者は「現状把握・ツール選定・現場定着・進捗管理」を担当した。

結果として、6ヶ月後に受発注のデジタル化が完了した。担当者も「社長が動いてくれた場面だけで、全然やりやすくなった」と言っていた。

「私がDXに苦手意識があるのは変わらない。でも、担当者に任せながら、決断する場面だけ出るようにしたら、半年で動き始めた。役割を分けるだけでこんなに違うとは思わなかった」

— 製造業・20名・広島県


まとめ:社長は「決断」、担当者は「実装」

社長とDX担当者の仕事の本質は、はっきり違う。社長の仕事は「方針・予算・後ろ盾・外部交渉」だ。担当者の仕事は「現状把握・ツール選定・現場定着・進捗管理」だ。

どちらが主導するかではなく、それぞれが自分の領域で機能するかどうかが、DX成否の分かれ目だ。また、どちらかが相手の領域に踏み込むと、もう一方が動けなくなる。

「社長が全部やろうとして、担当者が育たない」状態でも「担当者に任せきりで、方針がブレる」状態でも、DXは止まる。この役割分担を最初に明示して、それぞれが動き始めることが、最も確実なスタートだ。


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著者プロフィール

伊藤健太|株式会社ウェイビー 代表取締役CEO

23歳、病気をきっかけに、小学校友人4名、資本金5万円で起業。
2011年から起業支援の行政書士として国内有数の年1,000社超の起業に携わる。
その後、売上アップ、仕組み化、新規事業、事業承継、AI、DX化など1万社超の起業家、経営者の成長支援をサポート。
「AI/DX」「起業」「新規事業」「M&A」領域で国、自治体、金融機関、上場企業からの信頼も厚く、全国700回を超える講演、著書7冊。
地域が主役の日本新時代をDX×チャレンジで創るべく、起業家、経営者の成長支援と、金融機関、新聞社、自治体向けのDX支援を展開。第一生命、広島銀行、島根銀行、熊日新聞、愛媛新聞、新日本海新聞、北日本新聞、熊本市、人吉市、美里町、山形県寒河江市、奈良県田原本町、愛媛県松前町、西条市などをご支援中。

肩書など
1986年横浜市生まれ、熊本市在住。慶應義塾大学法学部卒業。
元徳島大学客員教授。ダボス会議 U33メンバー。
東京都INCU Tokyoメンター
熊本市スタートアップメンター

よくある質問

ITに詳しくない社長でもDXを推進できますか?
IT知識が乏しくても推進は可能とされています。社長の役割はツールの選定ではなく、目的の明確化や予算の確保、現場の反発に対する決断などです。実務やツールの調査は担当者に任せ、要所での判断に集中することが有効と考えられます。
社内のDX担当者にはどのような人材が適していますか?
現場の業務実態をよく把握しており、周囲と対話ができる人材が適していると言えます。ツールの選定だけでなく、現場の不安を解消する橋渡し役が重要になるため、専門知識以上に社内での調整力やコミュニケーション能力が役立つ場合があります。
DXの取り組みに対して現場から反発があった場合はどうすべきですか?
担当者一人に抱え込ませず、社長が方針を示して後ろ盾になることが重要とされています。そのうえで、担当者が現場の不安や懸念を丁寧に聞き取り、業務がどう改善されるかを粘り強く共有していくことで、定着につながりやすくなると考えられます。
最終更新日:2026-09-21 / 著者:AKINAI-X Lab編集部 / 出典:当社の支援実績(匿名化)