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介護職員の離職を減らすDX。業務負担軽減と「やりがい」の両立

📅 2026年06月26日
アキナイクロス

介護職員が辞める本当の理由を、あなたは把握しているだろうか。

介護職員の離職を減らすDX。業務負担軽減と「やりがい」の両立

「給料が低いから」と思っている施設長は多い。しかし、実態は違う。介護労働安定センターの調査では、離職理由の上位に「職場の人間関係」「身体的・精神的な疲労」「業務量の多さ」が並ぶ。つまり、DXで業務量を削減することが、離職率の改善に直結するのだ。

2,000社を超える支援の中で、私は介護事業所のDXが最も費用対効果の高い分野の一つだと確信している。記録・シフト・申し送りの3点を変えるだけで、離職率を半分以下にした施設もある。具体的な道筋を示す。


介護職員が「辞めたい」と思う瞬間はどこか

介護職員が「辞めたい」と思う瞬間はどこか

介護職員が燃え尽きるのは、利用者のケアではない。書類と雑務に追われる時間だ。

典型的な施設では、1日の業務時間の20〜30%が記録作業に消える。8時間勤務なら、最大2.5時間が紙との格闘だ。しかもその多くが「手書きでノートに書いて、後でPCに入力する」という二重作業になっている。

さらに問題なのは、シフトの不公平感だ。手作業でシフトを組むと、特定のスタッフに夜勤や連休明け出勤が集中しやすい。「自分だけ損をしている」という感覚が積み重なると、退職の引き金になる。申し送りも同様だ。口頭とホワイトボードに頼る情報共有は、ミスを生み、スタッフのストレスを高める。

これらはすべて「技術的に解決できる課題」だ。そのため、放置し続ける理由はない。


解決策①:介護記録のスマホ・タブレット入力

解決策①:介護記録のスマホ・タブレット入力

記録の二重作業をなくすことが、最初の一手だ。

クラウド型介護記録ソフト(カイポケ・ケアコネクト・eWELL等)を導入すれば、タブレットやスマートフォンで記録を直接入力できる。手書き→PC転記の作業がゼロになる。また、バイタル・食事量・排泄記録をアプリ上で一元管理できるため、情報を探し回る時間も消える。

具体的には、スタッフが利用者のベッドサイドでタブレットに入力し、それがリアルタイムでサーバーに保存される。ナースステーションに戻って転記する必要はない。この変化だけで、現場スタッフの残業が月平均10〜15時間削減された事例が複数ある。

介護記録ソフト導入のポイント

  • タブレット台数:スタッフ3〜4名に1台が目安。全員が同時使用できる数を確保する
  • 研修期間:2週間の並行運用(紙とデジタル併用)後に完全移行が定着率が高い
  • 高齢スタッフ対応:操作が簡単なアプリを選ぶ。ITリテラシーより「使いやすさ」を優先する

導入前に確認すること

  • 請求ソフトとの連携:記録データが介護報酬請求に自動反映される設計にすること
  • Wi-Fi環境:施設全体をカバーするネットワーク整備が前提条件になる

解決策②:シフト自動化で「不公平感」を消す

解決策②:シフト自動化で「不公平感」を消す

離職の隠れた原因がシフトの不公平感だ。これをデジタルで解消する。

シフト管理ツール(シフオプ・らくしふ等)を導入すると、希望休をLINEやアプリで収集し、自動でシフト案を作成できる。手作業では見落としがちな「同一スタッフへの夜勤集中」や「連続勤務オーバー」をシステムが検知してアラートを出す。

また、シフトの結果をシステム上で全員が確認できるため、「誰かに優遇・冷遇がある」という疑念を払拭できる。透明性が人間関係の改善につながるのだ。さらに、シフト作成に管理者が費やす月10〜20時間の作業が、3〜5時間程度に短縮される。その時間を現場改善やスタッフ面談に使えるようになる。


解決策③:申し送りのデジタル化でダブルチェックを削減

申し送りの非効率は、スタッフが気づきにくいが確実に疲弊を生む。

口頭での申し送りは、聞き間違いとメモの取り違いが起きる。重要な変化(利用者の体調変化・家族からの連絡)が次のシフトに正確に伝わらないと、確認のための電話や呼び戻しが発生する。これが「終わったはずの仕事がまだ終わらない」感覚につながる。

クラウド型介護記録ソフトには、申し送り機能が標準で含まれていることが多い。重要な情報は記録として残り、次の担当者がアプリで確認できる。口頭の確認回数が減り、スタッフ間の摩擦も下がる。一方で、申し送りのコミュニケーション自体が不要になるわけではない。デジタルは「補完」であり、スタッフ間の関係を深める時間を増やすための手段だ。

【比較】DX前 vs DX後の業務時間

業務項目 DX前(紙・口頭) DX後(デジタル)
介護記録入力 手書き→PC転記(月30〜40時間) タブレット一回入力(月10〜15時間)
シフト作成 管理者が手作業(月10〜20時間) 自動案生成(月3〜5時間)
申し送り確認 口頭・ホワイトボード(確認ミスあり) アプリで非同期確認(ミス激減)
スタッフ1人あたりの残業 月平均15〜20時間 月平均3〜8時間

鹿児島県・有料老人ホーム25名の事例

鹿児島県・有料老人ホーム25名の事例

鹿児島県の有料老人ホーム(定員50名・スタッフ25名)では、離職率が慢性的に高止まりしていた。年間離職率40%という数字は、採用コストの増大と、慢性的な人手不足の悪循環を生んでいた。

離職の聞き取りを行うと、共通の声が上がった。「書類が多くて利用者と向き合えない」「シフトが毎月不公平に感じる」——この2点だ。そのため、クラウド介護記録ソフトとシフト管理ツールの同時導入を提案した。

導入後6ヶ月で現場の声が変わった。「帰れる時間が早くなった」「シフトの組み方が納得できるようになった」という声が管理者に届くようになった。そして1年後、離職率は40%から18%に改善した。採用コストの削減だけで年間200万円以上のプラスとなった。初期費用を回収するのに1年もかからなかった。

「正直、機械に頼るのは抵抗があった。しかし導入してみると、スタッフがお互いに気遣う時間が増えた。これが一番の変化だと思っている。」

— 有料老人ホーム施設長・25名・鹿児島県


まとめ:介護DXは「働き方改善」そのものだ

介護職員の離職を減らしたいなら、給与だけを見ていてはいけない。業務負担の重さが離職の根本原因だ。そのため、DXで業務を減らすことが、最も直接的な定着率向上策になる。

記録のデジタル化・シフトの自動化・申し送りのデジタル化——この3点を実施するための投資は、月額数万円から始められる。一方で、離職率が10ポイント下がれば、採用・研修コストの削減だけで年間数百万円の効果が出る。DXは「IT化」ではない。スタッフが長く働き続けられる職場をつくるための、経営判断だ。

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著者プロフィール

伊藤健太|株式会社ウェイビー 代表取締役CEO

23歳、病気をきっかけに、小学校友人4名、資本金5万円で起業。
2011年から起業支援の行政書士として国内有数の年1,000社超の起業に携わる。
その後、売上アップ、仕組み化、新規事業、事業承継、AI、DX化など1万社超の起業家、経営者の成長支援をサポート。
「AI/DX」「起業」「新規事業」「M&A」領域で国、自治体、金融機関、上場企業からの信頼も厚く、全国700回を超える講演、著書7冊。
地域が主役の日本新時代をDX×チャレンジで創るべく、起業家、経営者の成長支援と、金融機関、新聞社、自治体向けのDX支援を展開。第一生命、広島銀行、島根銀行、熊日新聞、愛媛新聞、新日本海新聞、北日本新聞、熊本市、人吉市、美里町、山形県寒河江市、奈良県田原本町、愛媛県松前町、西条市などをご支援中。

肩書など
1986年横浜市生まれ、熊本市在住。慶應義塾大学法学部卒業。
元徳島大学客員教授。ダボス会議 U33メンバー。
東京都INCU Tokyoメンター
熊本市スタートアップメンター